私は、IT企業勤務で、出社とテレワークを併用した働き方をしていた。
前年末に多忙な部署へ異動した。全員が仕事を抱え込み、自分は朝9時から夜22時まで忙しく働く日々。新しいタスクが次々と降りかかってくる状況だったが、部署の方針は「新入社員ではないから、OJTは基本的に行わない。仕事をしながら体得してほしい」とのことだった。「とにかく仕事に慣れないと」と気持ちが焦り、部署メンバーに業務チャットや口頭で質問や相談をしたが、「あなたはメンバーへの質問が多い。相手の時間を奪っていて皆が困っている」と上司から指摘された。長時間労働、慣れない業務へのストレス、同僚に質問できない、相談できない状況が続き、自信がどんどんなくなっていった。やがて「何をやってもダメな自分」「皆に迷惑をかけていて会社に貢献していない」というネガティブ感情が業務外でも休日でも頭から離れなくなった。徐々に夜眠れなくなり、食欲も減退。趣味や息抜きも楽しめないばかりか、罪悪感すら覚えた。
それでも何とか耐え抜いていたが4月に、頭を締められるような頭痛と動悸が悪化。頭が回らなくなり、業務効率が著しく低下。それでも切れ目なく膨大な業務が降りかかってくる。もうこれ以上、無理だと思い、部署長に休職を申し出た。
診断書には、「抑うつ症」「不眠症」という記載。休職を決めたことで安堵した反面、取り返しのつかない決断をしてしまったと自責の念に駆られた。
実は、心療内科を訪ねたのは今から15年以上前のことだった。そのときの自分は、張り切って仕事に打ち込んでおり、昼夜仕事のことが頭から離れず眠れなくなったのだ。頭は冴えて働きたい意欲があるが、体がうまく動かない。これはマズいと思って、住まいに近い心療内科に飛び込んだ。そこで睡眠薬と、緊張や興奮を緩和させる薬を処方された。それからは、薬を飲んでいれば普通に社会生活は送れた。しかし、病気を理解しようという気持ちにはならなかった。今まで以上に仕事に打ち込んだ。
その後、今の会社に転職し、仕事へのモチベーションや働き方は変化していった。相変わらず心療内科で処方される睡眠薬は服薬していたが、「病気を治そう、セルフケアしよう、大切にしよう」という意識は皆無だった。それが今回の休職で初めて「抑うつ症」という病気を「真正面から受け止めて、理解しよう、自分から治そう」という気持ちになった。
うつ病に関する本をいくつか買い、読み進めていた中で「リワーク」という言葉を知る。ネット検索で、自宅から近い北千住にある「リワークRAKU」の存在を知った。ここならば、自分が不調に陥った原因が分かるかもしれない。自分が変われるかもしれない、そう思って問い合わせをして面談の機会を得た。面談が終わってすぐにリワークへの参加を決めた。
5月より、リワークに通う日々が始まった。休職したことで下記のことを何とかしたい、自分を変えたいと考えた。
・自分の考えや思いを周囲に伝えたり、相談できるようになりたい。
・ネガティブ思考になってしまう心のクセを直したい。
・何をやってもダメな自分から、周囲とのかかわりの中で、自分に自信を取り戻したい。
リワークでは生活チェックミーティングで、毎日の行動のモニタリングを行った。当初は、たとえば夜眠れなかったり、家族とケンカしたといった個人的な悩みを話していいのだろうか、と戸惑いもあったが、リワークの先輩方が良かったことも、課題点もありのまま話している姿を見て、勇気を出して、自己開示できるようになっていった。
また、集団認知行動療法では、自分のネガティブな感情のクセに気づくことができた。自然にわき上がった考えに引っ張られて行動していたが、自分の中で起きた認知を観察して適応的な思考ができるように、さまざまな手法を学ぶことができた。集団認知行動療法のテクニックは、日々実践することで磨かれていったので、今では日常生活で厳しい局面、ネガティブな感情が出てきたときに、俯瞰して自分の状態を観察できるようになってきた。
そのほか、心理教育では、疲労やストレスのメカニズムを理解したり、うつ病の原因や再発防止について学んだり、グループでディスカッションをする機会があった。同じ症状を抱えてそれぞれに目標を持ったメンバーの方ばかりだったので、お互いに刺激を受けながら、安心して各プログラムを受けられた。「リワークは実験の場」「失敗できる環境」なので、少しずつ「素の自分」を出すことができた。中でも、自分の趣味について語る「趣味プレゼンテーション」というプログラムが思い出に残る。自分の大好きなことについて、ほかの利用者、スタッフさんの前で夢中に話す経験から、人前で話す度胸もついた。
リワークで多くのことを学び成長できたと思う。積極的に各プログラムを受講して、「絶対に変わるんだ」という意気込みで臨んだし、周囲の優しさ、温かさに安心してさまざまなことに楽しみながらチャレンジできた。だからこそ、この年齢になっても、気持ちと行動によって自分自身を成長させることができたのだと思う。
リワークを卒業し、復職することができた。これからも人生の転機や仕事上の悩みが生じたときは、RAKUのスタッフさんに相談しながら人生を歩んでいきたい。
掲載日:2026年11月05日