「次に同じ状況に遭遇したら、どう対応するのか?」
自宅療養を始めて4か月が経ち、身体の疲労は落ち着いたものの産業医から復職許可が下りなかった。面談をするたびに聞かれるこの質問に、私は答えを用意できなかった。これ以上、一人で対処することへの限界を感じる中、リワークへの通所を産業医と保健師に勧められた。
私は適応反応症として休職に入った。業務中に言われた上司の言葉を起点に、気持ちが折れてしまった。つまり、休職理由は“人間関係に悩んで”ということになる。
他方で、私は別の悩みを抱えていた。それは非定型な発達特性、いわゆる“大人の発達障害”を抱えている可能性だ。休職を機に受けた心理検査でその可能性はより高くなった。検査結果を知ったとき、努力ではどうにもならない不可逆な特性を持つことに絶望し、適応のために努力を強いてきた社会に対して怒りの気持ちを抱いた。自分は“被害者”という気持ちが強かった。
リワークRAKUでは認知行動療法、ストレスや健康に関する講義など様々なプログラムを受講した。どれも勉強になり、思い返せばこれらは復職には必要な知識であった。しかし、当初は、自分の感情や行動を分析することについて、休職の原因が私にあると言われているようで葛藤が続いていた。そんな中、あるプログラム内で、自身の発達特性についてマニュアルを作成する機会があった。発達特性を言語化・客観視する機会は今までなく、自分が生活を送るためにどれだけ困りごとがあったのか明確になり、特性を自分ごととして考えるきっかけを与えてくれた。また、RAKUを利用するメンバーにも私と同じような特性を抱えている方がおり、人生で初めて悩みを共有し共感することができた。これを機に、発達特性を前提に自分の行動や感情を選択するようになり、休職の要因も自身の特性が関与しているという考えに変化した。
現在、私はRAKUでのプログラムを終え、会社の復職プログラムを実施している。冒頭の産業医への質問にも自分なりに答えを出せ、産業医も納得してくれている。RAKUへの通所を通し、自身の特性への理解が深まったことで、以前とは違う自分になれるかもしれないという期待もあった。蓋を開けてみれば、眼前に広がるのは日常である。仕事内容も人間関係も大して変わらない。毎日電車に揺られて出勤して仕事をするだけ。油断すると特性は表面化する。しかし、今過ごしている “日常“を送ることが、休職前の自分にとっていかに難しかったかをRAKUへ通った自分は知っている。
休職の出口は日常でしかないが、日常をどの様に過ごすかが自分を形作るのだろう。日常を送るための知識や経験を与えてくれたRAKU、そして利用者の皆様には感謝でいっぱいだ。
RAKUへの通所を通して、私に発達特性があること認識してからは、日常生活を送るこが非常に大変ということを強く実感した。外部からの刺激に敏感で、生活リズムは簡単に乱れるし、脳への負担も大きいから休憩を取らないと簡単に疲労する。RAKUのスタッフさんも「発達特性を持つ人は、社会へ適用するためにとてつもない努力をしている」という。
今、発達特性を抱えていて、私と同じように休職している方がいれば、一人で悩まずにリワークへ通うことを選択肢に入れてほしいと思う。
掲載日:2025年04月21日